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OMOとは何か?ECと実店舗を繋ぐ戦略の全貌|本質は組織と評価制度にある


執筆:株式会社Crescent ECコンサルティングチーム
(この記事は約11分でお読みいただけます)
「OMOに取り組みたいが何から始めればいいかわからない」
「OMOのシステムを導入したのに成果が出ない」
「ECと実店舗の連携がうまくいかない」
OMOを推進しようとする多くの企業が、こうした壁に直面しています。クレセントでは、EC支援の観点から数多くの企業のOMO戦略をご支援してきました。その経験から断言できることがあります。それは、OMOがうまくいかない本質的な原因は、システムやツールではないということです。結論から言えば、「組織体制」と「評価制度」、そして「企業文化」がOMOに適していないことが、OMOを阻む最大の壁です。
本記事では、OMOの定義やO2O・オムニチャネルとの違いといった基礎から、「OMOが進まない本質的な理由」と「その解決策」までを、体系的に解説します。
OMOとは何か?
OMO(オーエムオー)とは、「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインの境界をなくし、両者を融合させることで、顧客に一貫した購買体験を提供する考え方・戦略を指します。
■ OMO(Online Merges with Offline)とは
オンライン(EC・アプリ)とオフライン(実店舗)を区別せず融合させ、顧客がどのチャネルを使っても同一の一貫した購買体験を受けられる状態を目指すマーケティング・事業戦略のことです。
重要なのは、OMOが「オンラインとオフラインを別々のチャネルとして捉えない」という点です。企業側がチャネルを分けて考えていても、顧客にとっては「その企業から買う」という一つの体験でしかありません。この顧客視点に立ち、あらゆる顧客接点で一貫した体験を提供することがOMOの本質です。
OMOとO2O・オムニチャネルの違い
OMOはしばしばO2Oやオムニチャネルと混同されます。しかし、これらは考え方の中心が異なります。この違いを理解しないままOMO施策を打つと、的外れな取り組みになりかねません。以下に内容を整理しておきます。
| 用語 | 考え方の中心 | 顧客から見た体験 |
|---|---|---|
| OMO (Online Merges with Offline) | オンラインとオフラインの「融合」。境界をなくす。 | どのチャネルでも一貫した同一の購買体験を受けられる。 |
| O2O (Online to Offline) | オンラインからオフラインへ「送客」する。 | アプリのクーポンで店舗に誘導される等、一方向的。 |
| オムニチャネル | 複数チャネルを「連携」させて顧客接点を統合。 | どのチャネルでも購入できるが体験は各チャネル起点。 |
O2Oが「オンラインから店舗への送客」という一方向の考え方であるのに対し、OMOは「オンラインとオフラインの境界そのものをなくす」という考え方です。オムニチャネルはチャネルの統合に主眼がありますが、OMOはさらに進んで「顧客体験の完全な一貫性」を目指す点が異なります。
OMOがうまくいっている企業の顧客体験とは
OMOがうまく機能している企業では、顧客はどのチャネルで買い物をしても、同じIDに紐づいた一貫した体験を得られます。具体的な顧客体験の例を見てみましょう。
① IDベースでチャネルをまたいだ購買体験ができる
例えば、顧客が実店舗で会員登録をし、会員証を見せて商品を購入したとします。その後、帰宅してから追加で商品が欲しくなった際、店舗で登録した同じIDでその企業のECサイトにログインし、シームレスに買い物ができる。これがOMOで実現される代表的な体験です。
実店舗で買っても、ECサイトで買っても、アプリで買っても、顧客IDを軸に同一の体験・同一のサービスが受けられる。この状態こそがOMOの理想像です。
② 在庫のデジタル連携で機会損失を防ぐ
顧客が実店舗を訪れた際、欲しかった商品の在庫がなかったとします。このとき、店舗スタッフが「ECサイトなら在庫があります」と案内したり、「別の店舗に在庫があります」とデジタル上で在庫を検索して案内したりできれば、販売機会の損失を防ぐことができます。
実店舗の在庫という物理的制約を、オンラインとのデータ連携によって乗り越える。これもOMOがもたらす大きな価値です。
このように、OMOの体験例をあげれば、すでに皆さんも体験していることが多いと思います。そして、OMOの理想的な顧客体験を実現するシステム設計等は、すでにさまざまなツールやサービスで実現することが可能です。IDシステム・ECシステム・在庫連携システムなど、システムに関してはOMO戦略に対応させることは可能です。
なぜOMOは進まないのか|組織・評価制度という壁
ここからが本質的なOMOの話となります。多くの企業がOMOの戦略を打ち立て、高額なシステムを導入しながらも成果を出せずにいます。その理由は、OMOの本質的な課題が「システム」ではなく「組織体制」と「評価制度」にあるからです。
縦割り組織が生む「送客への抵抗感」
OMOを阻む最大の壁は、オフライン(実店舗)部門とオンライン(EC)部門の縦割り構造にあります。多くの企業では、店舗は店舗単位の売上目標を、EC事業部はEC単位の売上目標をそれぞれ負っています。
この構造下で何が起きるか。たとえば、店舗スタッフが接客したお客様が、その場では買わずに後日ECサイトで購入したとします。すると、そのお客様に対応・接客したのは店舗スタッフであるにもかかわらず、売上はEC側に計上され、店舗スタッフの成績にはなりません。
| 実店舗(オフライン)部門 | EC(オンライン)部門 |
|---|---|
| 店舗単位の売上目標を負っている | EC事業部単位の売上目標を負っている |
| 接客したのにECで買われると成績にならない | 店舗で買われるとEC側の成績にならない |
| 「ECに送客する」ことに抵抗感が生まれる | 「店舗に送客する」インセンティブがない |
| 結果:自部門の売上を守る動きが優先される | 結果:全社最適なOMOが進まない |
つまり、接客したのに自分の成績にならない・・・
この状況が続く限り、店舗スタッフは「ECサイトで買ってもらうこと」に抵抗感を抱きます。この抵抗感こそが、OMOを推進させない方向に働く最大の力になっているのです。
OMOはシステムの問題ではなく「評価制度」の問題
ここで強調したいのは、OMOにおいてIDシステム・ECシステム・各種サービスのシステムは、本質的な問題ではないということです。システムの設計はいかようにもできますし、それを実現するサービスも数多く存在します。
どんなに優れたOMO戦略を立案し、システムを導入しても、組織体制・評価制度・企業文化がOMOに適していない限り、OMOは決してうまくいきません。これが、クレセントが数多くのOMO支援を通じて痛感してきた本質的な課題です。
実際、クレセントへご相談いただくお客様の中にも、「実店舗側が協力してくれない」「自分たちはECの領域だけで、実店舗には手が出せない」といった組織的な障壁に直面しているケースが多く見られます。この状態では、どれだけシステムに投資してもOMOは前に進みません。
OMOを成功させる鍵は「横串組織」と「評価制度改革」
では、縦割り組織と評価制度の壁をどう乗り越えればよいのでしょうか。クレセントが考えるOMO成功の鍵は、大きく2つあります。
① 横串でデジタル戦略を組める「横断組織」をつくる
まず必要なのが、部門をまたいで横串でデジタル戦略・OMO戦略を組むことができる横断的な組織です。DX推進部門でも構いません。オンライン・オフラインの両方に対して横断的に関与できる部署を設けることが第一歩です。
このような横断組織があることで、その部署がデジタル領域やチャネル横断の施策に対して主体的に関与し、全社的なOMO推進を進めることができます。横断組織がなければ、各チームがそれぞれの目標のもとで動くだけで、会社全体としてOMOの方向に向かうことができません。
- 部門横断でOMO・DX戦略を立案・推進できる専門部署を設置する
- その部署に一定の権限を与え、各チャネルの施策に関与できるようにする
- 経営層直下に置くことで全社的な意思決定を可能にする
② 評価制度を「全社最適」に改革する
OMOを本質的に成功させるには、組織改革とあわせて評価制度の改革が絶対的に必要です。店舗スタッフがECへの送客に抵抗感を抱かないよう、チャネルをまたいだ貢献を正当に評価する仕組みを設計する必要があります。
たとえば、店舗で接客した顧客がその後ECで購入した場合、その売上の一部を店舗・スタッフの成績に反映させる仕組みを導入すれば、送客への抵抗感は解消に向かいます。評価制度が「全社最適」を向いてはじめて、現場がOMOに協力する動機が生まれるのです。
- チャネルをまたいだ顧客貢献を可視化・評価する仕組みを設計する
- 店舗発のEC売上を店舗側にも配分する等のインセンティブ設計を行う
- 部門単位のKPIから全社最適のKPIへと評価軸を再設計する
大企業から中小企業まで、各社のOMO戦略はIR資料を含めて方向性としては共通しています。しかし本質的にそれを成功させるためには、組織改革・評価制度改革が絶対的に必要です。OMOはシステム導入プロジェクトではなく、組織変革プロジェクトなのです。
OMO推進のためにEC事業者が今できること
OMOは大掛かりな組織変革を伴いますが、EC事業者としてまず着手できることもあります。以下のステップから始めることを推奨します。
-
現状の顧客体験を棚卸しする
:
自社の顧客がオンライン・オフラインをどう行き来しているかを可視化する
-
チャネル間のデータ分断を確認する
:
顧客IDが店舗・ECで統合されているか、分断されているかを把握する
-
縦割りによる弊害を洗い出す
:
部門間で送客への抵抗感や評価制度の課題がないかを整理する
-
横断組織の必要性を経営層に提起する
:
OMOが組織課題であることを経営レベルで共有する
-
小さな成功事例をつくる
:
一部店舗×ECで評価制度の試験運用を行い、効果を検証する
クレセントでは、EC事業の視点からOMO戦略の策定・組織設計・評価制度の見直し・システム選定まで、横断的にご支援しています。「OMOを推進したいが組織の壁にぶつかっている」という課題をお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
-
Q
OMOとオムニチャネルは何が違うのですか?
-
A
オムニチャネルは複数のチャネル(店舗・EC・アプリ等)を連携・統合して顧客接点を増やす考え方です。一方OMOは、オンラインとオフラインの境界そのものをなくし、顧客がどのチャネルを使っても完全に一貫した体験を得られる状態を目指します。OMOはオムニチャネルをさらに進化させた概念と理解するとわかりやすいでしょう。
-
Q
OMOを始めるにはまず何から取り組むべきですか?
-
A
システム導入から始めるのではなく、まず「顧客IDの統合状況」と「組織・評価制度の課題」を把握することから始めてください。OMOの成否はシステムよりも組織・評価制度に依存するため、現状の組織課題を可視化することが最初のステップになります。
-
Q
OMOのシステムを導入すればOMOは成功しますか?
-
A
いいえ。システムはOMO実現の手段にすぎません。どれだけ優れたシステムを導入しても、組織体制・評価制度・企業文化がOMOに適していなければ成功しません。つまり、組織体制も含めた戦略立案が必要となります。特に「チャネルをまたいだ貢献を正当に評価する仕組み」がなければ、現場の協力を得られずOMOは頓挫します。
-
Q
中小企業でもOMOに取り組む意味はありますか?
-
A
あります。むしろ中小企業は意思決定が速く、組織が小さい分だけ横断組織の構築や評価制度の改革を進めやすい利点があります。大企業のような大規模投資でなくとも、顧客ID統合と評価制度の工夫から始めることで、OMOの効果を得ることは十分可能です。
まとめ
OMO(Online Merges with Offline)は、オンラインとオフラインを融合させ、顧客に一貫した体験を提供する事業戦略です。本記事の要点を整理します。
-
OMOの定義
:
オンラインとオフラインの境界をなくし、どのチャネルでも同一の顧客体験を提供する戦略
-
O2O・オムニチャネルとの違い
:
OMOは「境界の消滅」と「体験の完全な一貫性」を目指す点が異なる
-
理想的な顧客体験
:
IDベースでチャネルをまたいだ購買・在庫のデジタル連携による機会損失防止
-
本質的な課題
:
システムではなく、縦割り組織と評価制度こそがOMOを阻む最大の壁
-
成功の鍵
:
横串の横断組織の設置と、全社最適を志向した評価制度改革
OMOの成否を分けるのは、システムでも予算でもありません。「組織体制」と「評価制度」、そして「企業文化」をOMOに適した形へ変革できるかどうかです。OMOはシステム導入プロジェクトではなく、組織変革プロジェクトである——。この認識こそが、OMO成功の出発点になります。
クレセントは、EC事業の視点からOMO戦略の策定に関して、企業様の課題に横断的に向き合ってご支援しています。OMO推進に壁を感じている企業様は、まずはお気軽にご相談ください。
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2015年早稲田大学大学院/経営管理修士(MBA)、現在、ECコンサルティングはもちろんのこと、組織コンサルティングや新規ビジネスプロジェクト等、様々な企画へ参画し、その辣腕を発揮している。
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