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D2Cビジネスの成功は組織改革にある。デジタルを受け入れことからD2Cは始まる。
D2Cというビジネス用語。
この記事を読んでいる方であれば、当たり前に理解しているのではないでしょうか。
Direct to Consumerの略であり、自身が生産・製造した商品を、卸・小売りなどの通常流通を挟むことなく、ユーザへECチャネル(デジタルチャネル)を使って販売していくビジネスモデルのことです。
2010年にアメリカで産声を上げたこのビジネスモデルは、2018年頃から日本でもECビジネス界隈で聞かれるようになりました。そして、2020年のコロナ禍において、D2Cはバズワードと化し、多くの企業がD2Cを謳うようになりました。
しかし、D2Cという言葉の理解に関して、メーカーが直接消費者へモノを販売すること程度に理解をしているビジネスパーソンは非常に多いのではないでしょうか?
D2Cはメーカーによるただの中抜きビジネスではない。
今回の記事ではD2Cに関して抑えるべきポイントをいくつか説明していきます。
是非、最後まで読んでいただければ幸いです。
D2Cとは何か?今までと何が違うのか?
D2CはDirect to Consumerの略であることは先ほど記載をしました。要するに、メーカーが直接消費者へ消費を販売していく、それをデジタルのチカラを使いながら、ECを主戦場として展開するビジネスであると言えます。
“これって、今までも2018年以前もEC上でおこなわれてきたビジネスだよね?”
と考える方もいらっしゃると思います。その考えは間違ってはいません。一見、ビジネスモデルだけを単純に切り取れば、D2Cは昔から存在したビジネスモデルに見えます。
では何が、今までのビジネスモデルと違うのか。
それは、テクノロジー×ブランディングによる「ユーザと世界観を共有し構築する」という観点に重きを置いたビジネスモデルであることが、今までの一般的なリテールビジネスと違う部分だとご理解いただければと思います。
要するに、D2Cビジネスでは商品を売るコトではなく、ブランドの世界感に対するユーザとの共感性を生むコトにフォーカスすることが求められるビジネスモデルであると言えます。
今D2Cビジネスが必要な企業とは?
D2Cビジネス界隈では、新進気鋭のデジタルネイティブな起業家が多く存在しています。この層は1990年以降に生まれたZ世代の人が多く、デジタルを軸として、テックを駆使し、ブランドとしての世界感をものの見事に構築していきます。
これらのベンチャー企業にとって、D2Cビジネスはリニアに企業文化としても浸透させやすく、当たり前の価値観としてユーザと世界観を共有しビジネス拡大を推進します。
しかし、本当に日本経済のために、日本のEC市場拡大のために、D2Cビジネスの概念や価値観が必要な企業はどの様な企業なのか。私は、昭和・平成と日本の成長を支えてきた既存のブランド企業にこそ、このD2Cの考え方が必要なのではないか、既存ビジネスにD2Cの価値観を付帯して新たな価値を醸成することが出来るのではないかと考えています。
今まで既存のビジネスモデル・小売流通網の中で、リアル店舗で着実にブランドを積み上げてきた既存ビジネスプレイヤーの方々には、リアルにてユーザと繋がってきたという経験があります。D2Cビジネスは、その経験から紡ぎだされる世界感をテック活用にて、デジタルの世界で昇華させていく事でもあります。
従って、今、D2Cビジネスの概念が必要となる企業は、今までのメーカー・卸・小売りのリアル商流通ビジネスモデルでブランドを積み上げてきた大手~中小までのメーカー/ブランド企業であると考えます。
D2Cビジネスは社内の変革から始めよ
“自社が積み上げてきたブランドをデジタル領域にてユーザコミュニケーションを活性化せて成長させていきたい”、大手企業内でもダイレクト通販の部署や、EC事業部などに所属されている方々は、この様なことを日々考えて仕事をしていると思います。
しかしながら、大企業になればなるほど、D2C概念へのシフトは難しくなります。
理由としては、リアル店舗を中心とした既存商流通ビジネスでは、卸業販売が収益の大半を占めているブランド企業が多いからです。要するに、ECによるダイレクト販売は、卸会社や販売会社との関係性の問題から、踏み出すコトを躊躇する経営者が多いということです。
これは、当たり前のことです。ECの歴史を見れば、過去にEC市場に関しては小売業の独断上でした。メーカー企業や卸企業がECで販売することは非常に少なく、それは既存の流通を守る上でも当たり前の考え方でした。
しかしながら、2010年以降にSNSやC2Cなど、ユーザが個人で繋がり、コミュニケーションを活発化させることでビジネスを生み出してく流れが強くなりました。このビジネスの流れが速すぎることで、長く既存ビジネスを展開している経営層までD2Cビジネスの概念が浸透しきっておらず、結果として経営者の方でD2CビジネスにNGを出してしまうケースが多いのです。現場のEC担当やSNSコミュニケーション担当の方々はデジタルに関して知識があり、D2Cを促進したいと考えていても、この様な組織における情報格差や既存ビジネスとの兼ね合いで、進み方が遅くなってしまうのが現実です。
従って、D2Cを実行してくために必要な業務として、まずは、社内体制/組織体制の構築になるかと思います。概念として受け入れがたいモノであればあるほど、推進していく人間がその社内で力を握っていない限り、ビジネスは先へは進みません。
D2Cで成功を収めるためには、企業組織を改編すること、社内決定権の強い方、D2Cを推進したいと考えている方の直下ビジネスとして運営すること(社長直下案件)など、D2Cビジネスにて芽が出るまでビジネスを育てていく環境を社内で整えていく事が最初に重要となります。
D2Cビジネスに必要となる武器とは
最後にD2Cビジネスを実際に進めていく上で必要となる武器を記載します。
① :デジタルを中心とした人事戦略と組織編制
② :ユーザデータの取得/管理/活用体制の構築
③ :ユーザとのコミュニケーションノウハウの醸成
④ :既存販売チャネル整理とEC/デジタルチャネルへの切替
⑤ :若い層のアイデアに耳を傾けること
1つ目は「デジタルを中心とした人事戦略と組織編制」に関してです。
これは、D2Cビジネスを実施する前に必要であるとした「社内変革」の内容と同義となります。要するに、D2Cにてデジタルビジネスを促進していくのであれば、デジタルに強い人間を組織に加えていき、新しい考え方のもと、ビジネスを実行していくことが必要となります。
D2Cやデジタル上でのコミュニケーションは新しい価値観であることから、どうしても年齢を重ねるごとに、会議中に昔はこうだったとか、私の時代はこうだったの様な言葉が増え、若い人が考えていることや実行することに抵抗を示す上司の方が増えていきます。
これが社内のデジタル化、D2Cビジネスの促進を阻害する要因になってしまうことは非常に残念です。まずは、D2Cビジネスを社内で実施するためにはどうすればいいのか?という土俵に立ち、数値ベースで議論を重ねることを社内で実施してください。
幸いにもデジタル領域に関しては、数値やデータで語ることが出来る機会が非常に多くあります。「やりたくない、嫌い、怖い」などの感情だけで動くのではなく、デジタル系のビジネスは常にデータや社会の流れを的確に把握し、若い人から教わるくらいの感覚を持って推進していくことが必要となるのです。
2つ目は「ユーザデータの取得/管理/活用体制の構築」に関してです。
D2Cビジネスを促進していく上でデータの取り扱いは非常に重要となります。データを取得して管理し、活用すること、そして、このサイクルを回すことが可能となる体制構築が必要となります。
では、実際にD2Cビジネスにおいて重要となるデータは何か?私が考える最も重要なデータはユーザ行動のデータとなります。お客様がデジタル上でどの様に動いているのか、その結果、どの程度の収益を生み出してくれているのか、このユーザ行動に関連したデータを管理することは非常に重要となります。今では多くのCDPが誕生しているので、データ管理から活用まで充分に行えるようになってきました。
しかし、大手企業になればなるほど立ちはだかる課題がデータ取得領域におけるID問題となります。M&Aの加速並びにHD化によって、様々な顧客IDを保有した企業が事実上は統一プラットフォームの上で複合的に経営されている時代となりました。この様な環境下で、ユーザをOne-IDにて管理するためのID統合管理のSaaSモデルもちらほら見えてくるようになってきました。
ただ、このOne-ID化に関しては、技術的な側面ではなく、ユーザに対するユーザビリティの側面やセキュリティ上の観点から、離脱やUX低下を招く可能性をはらんでいます。従って、まだまだ、1つの企業が提供する複合的なサービスを、それぞれサービスごとに別々のID/Passで管理しなくてはならないことが多くあります。
今後、企業内でD2Cビジネスを大規模に運営管理していくためには、ユーザデータを取得する部分におけるユーザID/Passの一元化(One-ID化)を視野に入れて、ビジネスを展開していくことが必要となります。
3つ目は「ユーザとのコミュニケーションノウハウの醸成」に関してです。
D2Cビジネスにおいて最重要な領域となります。
如何にしてユーザをファン化させるために、企業側とコミュニケーションをとっていくか?を徹底的に考え、実行し、検証し、また実行することを繰り返していきます。
コミュニケーションプラットフォームはSNSであり、InstagramやTwitter、youtubeなどを中心として、Facebook やLINEやメルマガも織り交ぜながらコミュニケーションをとっていきます。
コミュニケーションの取り方やSNSやプラットフォームの操作に関しては共通化できるノウハウがあるものの、実際にユーザと共有していくコンテンツに関しては、その企業独自のノウハウを構築していく必要があります。
コミュニケーションはデジタルでのやり取りであろうが、結局は「ヒトとヒト」とのやり取りとなります。その企業内でユーザとコミュニケーションをとっている組織の雰囲気や考え方がSNSを通じて、コンテンツとしてユーザへ届けられます。その雰囲気に対して、ユーザが共感性を強く持ち、ブランドが持つ世界感を理解してくれたりしながら、デジタル上でブランドの認知が広がり、最終的に収益化されていくのです。
従って、D2Cブランドを醸成するためには、その組織内の考え方や雰囲気をまずは醸成していくこと、そこから紡ぎだされるコンテンツを丁寧にユーザへ伝えていくことが非常に重要となります。
4つ目は「既存販売チャネル整理とEC/デジタルチャネルへの切替」に関してです。
D2Cビジネスを進めていく上で、既存販売チャネルとの整合性の整理は重要となります。
例えば、ブランドAの商品をD2Cビジネスにてファンを多く抱えるブランドへ育てていくと決め、ビジネスを開始したとします。しかし、自社の公式オンラインショップにて15,000円で販売しているブランドAの商品が、なぜか、Amazonや楽天にて12,500円でさらにおまけの商品までついて販売されていました。これでは、ブランドAを公式オンラインショップで購入したユーザをがっかりさせてしまう可能性があり、また、ブランドとしても価格競争に入ってしまう可能性があります。その後、よくよく調べると、卸事業のチームがブランドAの商品を特定の卸さんへは継続的におろして販売し、価格のコントロール権に関しても、一定間隔で渡していたことが分かりました。
実は、この様な例は多くのメーカー企業様で発生しています。しかしながら、D2Cブランドはファンとの世界感を大切にするブランド醸成ビジネスです。他のサイトで安い価格にて販売されていることは、リユース品や小規模な個人売買でない限り、全て潰していくことが必要となります。そうでないと、ユーザはファンになるどころか、高く商品を買ってしまったことに対する認知的不協和を起こし、ブランドから離れていってしまいます。
この様な事態を防ぐためにも、D2Cビジネスを展開するブランドに関しては、既存の販売チャネルを整理して、事業戦略内でビジネスの整合性を取っていく必要があるのです。
また、今後、D2Cビジネスにてユーザへの直接販売を強化していく予定の有るブランドに関しては、同様にチャネルの整理と切替タイミングを事業戦略の中に織り交ぜていくことが大切であると考えます。
最後の5つ目は「若い層のアイデアに耳を傾けること」です。
今、小売業において時代が変化する過渡期であると考えられます。1990年以降のZ世代がビジネスに参入することで、デジタルネイティブである人の中でビジネスが展開されてくるようになってきております。
この変化が引き金となり、今までの商流通がいきなり壊れるということはありませんが、今まで考えもつかなかった若い層のアイデアによって、新たなビジネスや価値が生まれるチャンスの時期であると経営層はとらえるべきなのです。
従って、20代・30代の若手からのデジタルが起点となったアイデアや意見を、社内で効果的にとらえ、数値でしっかりと検証し、ビジネスに活かしていくフローを構築することが、経験のある上司や経営層の役割であると考えます。
冒頭にも説明した通り、D2Cビジネスの促進を妨げる一番の障壁は、企業内における政治と情報格差、新しいデジタル系の考えを忌み嫌う感情です。
この部分を解消し、積極的にデジタルに関する議論を重ねることが出来る企業は新たな波であるD2Cビジネスに乗り込んでいけると考えられます。
D2Cの具現化に向けて一歩踏み出すために
これまで説明してきたD2Cビジネスに関する事柄は、弊社Crescent(クレセント)がクライアント様へコンサルティングをしている中から実際に発生した課題や問題に沿って記載をしております。
既存ビジネスが収益の半分以上を占めているブランドやメーカー企業様がD2Cビジネスを促進していくためには、とにかく組織改革が重要となります。それだけ、D2Cは今までのビジネスと進め方や概念が異なるため、ビジネスを育てるための土壌をまずは作っていかない限り成功はないと、我々Crescentでは考えております。
D2Cビジネスは、ToC向けビジネスにおける新たな時代の幕開けとなり、過去の商流通と共存して考えるべき概念の1つでもあります。新たなビジネスの過渡期に、その恩恵を十分に企業として吸収していくために、あなたの企業でもD2Cビジネスを促進していく事をお勧めいたします。
弊社ではD2Cビジネスに関して些細なことからご相談を承っております。少しでもD2Cビジネス/ECビジネスを促進していきたいとお考えになる経営者様やご担当者様がいらっしゃいましたら、弊社へお問い合わせ下さい。専門のコンサルタントから折り返しご連絡をさせて頂きます。
2015年早稲田大学大学院/経営管理修士(MBA)、現在、ECコンサルティングはもちろんのこと、組織コンサルティングや新規ビジネスプロジェクト等、様々な企画へ参画し、その辣腕を発揮している。
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